近年、副業を認める会社が増加傾向にあることから、副業を始める人も増えつつあります。
副業で順調に利益を出している人は、節税のために法人化を考えている人もいるのではないでしょうか?
しかし、本業の勤務先にばれるのではないかと考えて、なかなか法人化に踏み切れない人もいますよね。
この記事では、副業を法人化すると本業の勤務先にばれるのか、会社設立のメリットやデメリットをまとめました。
副業を法人化することで後悔や失敗をしないために大切なことを解説していますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
目次
副業で法人化するとばれる?
結論からお伝えすると、会社員が副業で法人化した場合にばれる可能性はあります。
ばれる可能性が上がるパターンは2つです。
1つめは、会社を設立する際に「法人番号公表サイト」へ登録されること。
2つめは、設立した会社から給料を貰うことで住民税の支払い金額が多くなることです。
「法人番号公表サイト」には社名と所在地が記載されますが、会社のHPやプレスリリースを出している場合は社長名なども一緒にばれる可能性があります。
設立した会社から給料を貰っている場合は、本業の勤務先と2ヶ所から給料を貰うことになるので、住民税の支払い金額が多くなりばれるリスクが上がります。
副業で法人化してもばれない方法
副業で法人化すると本業の勤務先にばれる可能性が高くなるため、何とかばれないようにするための手段を知りたいですよね。
ばれないための対策方法は、以下の2つです。
- 自分以外の人を社長にする
- 設立した会社から給料を貰わない
1つずつ見ていきましょう。
自分以外の人を社長にする
対策方法の1つめは、自分以外の人を社長にすることです。
会社を設立する際に、設立した人が社長にならないといけないルールはありません。
自分を社長にせず家族や信頼できる人を社長にすることで、副業が本業の勤務先にばれにくくなります。
設立した会社から給料を貰わない
対策方法の2つめは、設立した会社から給料を貰わないことです。
本業の勤務先から給料を貰っており設立した会社からも給料を貰うと、二重で給料をもらっていることになります。
結果として、住民税の金額や社会保険などさまざまなところで問題が生じ、本業から確認が入ることにつながりかねません。
設立した会社の給料は会社内でプールしておけば二重で受け取る給料は無く、ばれる可能性が低くなります。
ちなみに、自分を社長とすることで役員報酬を受け取る場合は、確定申告時に普通徴収を選択して本業の会社から給料で天引きされないようにしましょう。
住民税は、本業の給料に副業の給料をプラスして税額を計算するため、本業の給料から天引きされる金額が変わり副業がばれる可能性が上がります。
しかし、自治体によっては普通徴収を選択できないこともあるので、事前に自治体へ確認しておくことをおすすめします。
副業を法人化するタイミング
副業が順調に軌道に乗り始めたら、多くの人が次に考えるのは税金対策です。
法人化すると節税対策になる場合があり、会社設立を検討するタイミングは以下の2パターンです。
- 課税売上高が1,000万円を超える
- 利益が500万円を超える
それぞれ見ていきます。
課税売上高が1,000万円を超える
副業の課税売上高が1,000万円を超えたら副業の法人化を検討しましょう。
売上高が1,000万円を超えると消費税がかかってくるためです。
法人化して最初の2年は準備期間とみなされ消費税の支払いが免除になります。
個人事業主のままだと消費税の支払いは免除されませんが、課税売上高が1,000万円を超えるタイミングで会社を設立すると節税効果があります。
利益が500万円を超える
副業利益が500万円を超えることも法人化を検討するタイミングです。
個人事業主は所得の金額に応じて所得税がかかり、税率は累進課税で所得が低ければ税率も最小で5%と低く済みます。
しかし、所得が上がると税率も最大で45%まで上がります。
法人化した場合は、法人税が最大でも23.2%までに抑えられるため、利益が500万円を超えるなら会社設立を検討しましょう。
利益が大きくなっていくと所得税の金額も多くなりますが、法人なら事業で出た利益を役員報酬として支払う給与所得控除が可能です。
給与所得控除については、副業を法人化するメリットで解説します。
副業を法人化するメリット
会社員が副業で会社設立をするメリットは以下の5つです。
- 給与所得控除が使える
- 経費として計上できる幅が広がる
- 消費税が2年間免除される
- 決算日を自由に決められる
- 社会的な信用が上がる
それぞれ詳しく解説していきます。
給与所得控除が使える
会社員が会社を設立して得られる収入は、役員報酬として給与所得控除を受けることができます。
役員報酬とは、法人が事業主に支払い報酬のことで、給与報酬と同じように個人の報酬として扱われるため給与所得控除の対象になります。
家族に事業を手伝ってもらうなどの場合も会社を設立することで、制限なく給与として報酬を支払うことができるので所得や住民税の節税に効果的です。
経費として計上できる幅が広がる
会社を設立すると、個人事業主よりも経費として計上できるものの幅が広がります。
例えば、健康診断の費用や保険料など個人事業主よりも多くのものを経費にすることが可能です。
飲食代などは経費として計上できないこともあります。
しかし、家族を社員として雇っている場合に、家族と食事へ行って会社の話をすれば経費として認められることが多くあります。
消費税が2年間免除される
副業を法人化するタイミングでもお伝えした通り、法人化すると消費税の支払いが2年間免除されます。
ちなみに、個人事業主の場合は免除されません。
法人化してはじめの2年間は準備期間とみなされるので、節税対策となり法人化する大きなメリットがあります。
決算日を自由に決められる
会社を設立すると自分で自由に決算日を決めることができます。
個人事業主の場合は、1月から12月までが事業年度と決まっており、翌年3月15日までに確定申告を行うのが基本的な流れです。
副業の繁忙期が1月~3月だと、本業プラス副業の事業、確定申告の準備も重なって忙しくなり、副業の時間が全然取れない弊害が出てくることもあります。
しかし、法人化すれば決算期を自由に決められるため、繁忙期などを避けて比較的余裕のある時期に設定することで落ち着いて決算処理ができるでしょう。
メインの取引先と決算月を合わせれば、スムーズに取引を行うことも可能です。
社会的な信用が上がる
法人化したほうが個人事業主よりも社会的に信用が上がります。
企業によっては個人事業主などの個人とは取引を行わなかったり、取引できないというところもあるため、法人化すると社会的信用性を得やすくなる効果が。
また、銀行などの金融機関から資金調達する際にも、融資を受けやすくなったり人材を確保しやすくなったりとさまざまなメリットがありますよ。
副業を法人化するデメリット
会社員が会社設立をするメリットが分かったところで、デメリットは以下の4つになります。
- 会社設立の費用がかかる
- 決算処理の負担が大きくなる
- 赤字でも税金を支払う必要がある
- 勤め先の会社にばれるリスクがある
会社設立のタイミングを間違えると損をする可能性があるので、これから見ていくデメリットの内容はしっかり覚えておきましょう。
会社設立の費用がかかる
会社を設立する際には当然、お金がかかります。
個人事業主として副業を行う場合には税務署に届出を出せば良いので、比較的簡単に事業を始められてお金もかかりません。
一方で、会社を設立する際には複雑な書類作成が必要なので、専門家に頼むなら手数料が発生します。
会社の設立費用は株式会社で約25万円、合同会社で約6万円の費用がかかるうえに、利益が出ていなくても法人住民税が毎年7万円かかります。
税理士や社会保険労務士などに業務委託を考えているなら、法人は顧問料が高く設定されていることが多いため支出が増える可能性があるでしょう。
決算処理の負担が大きくなる
会社を設立すると決算処理が煩雑になり、個人事業主と比べて大変になることが大半です。
法人は会社法のルールに従って複式帳簿による記帳と処理が必要になるので、一般的に税理士に依頼する企業が多くあります。
また、会計処理を行うために経理担当者を雇用することになり、その分の経費が増加する可能性も考えられます。
赤字でも税金を支払う必要がある
法人化すると赤字でも税金を払う必要があります。
法人住民税の一部が資本金額に応じて課税される仕組みになっており、それを法人住民税均等割といいます。
ちなみに、法人税の税率は15%~23.2%です。
法人の場合は従業員がいなくても役員報酬を受け取っているなら、社会保険に加入しなければならず個人事業主として副業を行うよりも負担が大きくなります。
勤め先の会社にばれるリスクがある
副業を法人化すると、本業の勤務先にはれてしまうリスクがあります。
法律上、副業は禁止されていませんが、本業の勤務先が副業を許可していなかった場合にばれるとトラブルとなる可能性も。
企業秘密漏洩など起こってしまったら、損害賠償問題にまで発展する恐れがあります。
特に問題が起こらなくても副業禁止の企業で周囲に伝わってしまったら、周囲の人間との間に壁ができてしまう可能性も十分にあります。
結果として、会社に居づらくなり辞めざるを得なくなってしまうことも多いです。
副業を法人化するための手順
副業を法人化するための手順を以下にまとめました。
- 定款の作成・認証
- 登記申請
- 登記事項証明書の取得
- 法人の印鑑証明書の取得
- 税務署関連の手続き
- 社会保険関連の手続き
1つずつ順番に解説していきます。
定款の作成・認証
定款とは、会社を経営していくためにルールをまとめたものです。
法人化するにあたって必要なもので、もっとも重要な書類になります。
サラリーマンの副業として会社設立をする場合は、インターネット上で雛形を探して各記載事項を埋めていく形式でも良いでしょう。
定款は特に決まったフォーマットはありませんが、紙か電子のどちらかで作成が必要です。
定款の作成が完了したら、会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する公証役場で「定款の認証」を受けます。
登記の申請
定款の作成と認証が終わったら、次は登記の申請です。
会社登記は法律で義務付けられており、手続きは必ず行ってください。
登記は法務局にて申請が必要で、窓口もしくはオンラインで申請を行うことができます。
ちなみに、オンラインで申請ができるのは商業法人登記に限られます。印鑑の提出や電子証明書の審査請求はできませんので注意が必要です。
登記事項証明書の取得
登記事項証明書とは、会社が法務局に登記された内容を証明するものです。
登記事項証明書は銀行口座の開設や、年金事務所へ届出をする際に必要なものになります。
取得方法は、管轄の窓口で申請する、オンラインで手続きをして郵送や最寄りの登記所で受け取る方法があり、手数料は以下のようにそれぞれ異なります。
- 管轄の窓口は600円
- オンライン申し込み後、郵送での受け取りは500円
- オンライン申し込み後、最寄りの登記所などでの受け取りは480円
管轄の窓口で請求するよりもオンラインで請求するほうがお得なので、活用してみてください。
法人の印鑑証明書の取得
法人の印鑑証明書とは、会社設立時に正式な会社の代表印であることを証明する書類です。
法人の銀行口座を開設したり、不動産登記をしたりする際に提出を求められるものになります。
ちなみに、印鑑は、会社設立後に銀行印や請求書発行時などに押印が必要なため「実印」「銀行印」「角印」の3本をまとめて作成しておくと後々に便利です。
法人の印鑑証明書の取得は、会社の代表者本人もしくは委任を受けた代理人のみ請求することができ、取得方法は以下の4パターンあります。
- 法務局の窓口で申請する
- 証明書発行請求機で手続きする
- 郵送で請求する
- オンラインで申請する
法人の印鑑証明書取得には、手続きに印鑑カードや法人の電子証明書が必要になるのであらかじめ取得しておきましょう。
税務署関連の手続き
印鑑証明書の取得まで完了したら会社設立が完了です。
その後は、納税地(本店所在地)の管轄の税務署に「法人設立届出書」と「青色申告の承認申請書」を提出します。
それぞれ提出期限が異なるためあらかじめ把握しておきましょう。
社会保険関連の手続き
会社を設立すると社会保険関連の手続きも必要です。
会社の代表取締役が1名でも役員報酬があると社会保険の加入は必須で、個人事業主も従業員数によるものの基本的に社会保険へ加入しなければなりません。
副業を法人化すると社会保険の加入手続きは、本業の会社を管轄する年金事務所へ届出の提出が必要です。
そのため、手続きをすることによって本業の会社へ通知が届き、副業を秘密にしている方は会社へばれる可能性が上がるため注意しましょう。
副業を法人化する際の注意点
副業を法人化する際の注意点は、以下の3つです。
- 会社設立には最低2週間かかる
- 廃業には会社設立と同じくらいの費用が必要
- 会社設立で事務作業の負担が増える
それぞれ注意点を見ていきましょう。
会社設立には最低2週間かかる
会社設立の手続きは、最低でも2週間以上かかります。
もし自分で会社設立の手続きを行う場合は、費用は抑えられるものの定款などの必要書類の作成にかなり時間がかかります。
その際は、副業の事業に支障をきたさないよう余裕をもって計画的に準備を進めてください。
専門家に依頼すると、手続きのミスを予防でき時間短縮にもつながりますが、費用がかかり顧問契約が必要となることもありますのでよく比較検討しましょう。
廃業には会社設立と同じくらいの費用が必要
会社を設立する際に費用がかかるのと同様に廃業するときも費用がかかります。
法人化した場合は、事業をやめるためには廃業の手続きをしなければなりません。
廃業手続きの費用は、株式会社の解散手続きに登記の登録免除で3万9,000円、官報公告に4万円ほどかかります。
会社を廃業するまでの期間は2ヶ月以上かかり、スムーズにできない場合は数年単位で期間がかかることもあり計画的に廃業手続きを進めることが必要です。
会社設立で事務作業の負担が増える
会社設立後は、対外的に提出する書類が増えるため、事務作業が多くなり負担も増えます。
法人化すると源泉徴収の納付書や源泉徴収票の作成といった業務が発生し、自分で処理しようとすると事業に充てられる時間が減ることになるでしょう。
事務作業を担ってくれる従業員や税理士を雇う場合は負担を軽減できる分、費用はかかるので自身で行うのか人に任せるのか長期的な視点で計画が必要です。
副業で法人化するとばれる?会社設立のメリット・デメリットや流れもまとめ
- 副業で法人化するとばれる?
- ばれる可能性はある
- 副業で法人化してもばれない方法
- 自分以外の人を社長にする
- 設立した会社から給料を貰わない
- 副業を法人化するタイミング
- 課税売上高が1,000万円を超える
- 利益が500万円を超える
- 副業を法人化するメリット
- 給与所得控除が使える
- 経費として計上できる幅が広がる
- 消費税が2年間免除される
- 決算日を自分で自由に決められる
- 社会的な信用度が向上する
- 副業を法人化するデメリット
- 会社設立の費用がかかる
- 決算処理の負担が大きくなる
- 赤字でも税金を支払う必要がある
- 勤め先の会社にばれるリスクがある
- 副業を法人化するための手順
- 定款の作成・認証
- 登記の申請
- 登記事項証明書の取得
- 法人の印鑑証明書の取得
- 税務署関連の手続き
- 社会保険関連の手続き
- 副業を法人化する際の注意点
- 会社設立には最低2週間かかる
- 廃業には会社設立と同じくらいの費用が必要
- 会社設立で事務作業の負担が増える
以上、副業で法人化するとばれる?会社設立のメリット・デメリットや流れをまとめました。
会社員が副業で法人化すると節税効果があります。
しかし、法人化するにあたって本業の勤務先にばれる可能性があることや、事務作業の負担が増えたりコストがかかったりとデメリットもあります。
そのため、必ずしも法人化することが正解とは一概には言えません。
副業の法人化を成功させるためにしっかりタイミングを見計らい、メリットやデメリットなど多角的に検討して判断するようにしましょう。