副業により一定の収入を得た場合、確定申告が必要になります。
経費の仕訳をしていると、「これは経費に計上できるのか、できないのか?」と悩んでしまうことも多いのではないでしょうか。
とくにガソリン代のについて迷うケースが多いようですが、結論からいうと副業で使用したガソリン代は経費として認められます。
そこでこのページでは副業で使用したガソリン代の仕訳時に迷いがちな勘定科目や、自家用車を副業に使用する場合の注意点、ガソリン代の計上方法について解説します。
「1台の車を副業とプライベート両方に使っている」「ガソリン代の経費への計上方法がわからない」という人は、ぜひ参考にしてみてください。
副業で使用したガソリン代は経費になる!
副業で使用したガソリン代は経費として認められます。ただし、ガソリン代のすべてが経費として認められるというわけではありません。
経費として計上できるのは副業に関係するガソリン代のみなので注意してください。
たとえば取引先に向かうために使用したガソリン代など、事業に関係するガソリン代については経費として計上することができます。
一方、家族や友人と出かけるなどプライベートな理由で使用したガソリン代は、経費として認められません。
自家用車を副業で使用している場合など、副業の支出もプライベートの支出も同じ財布から出しているというケースがあります。
しかし経費として計上してもよいかの判断基準は「事業に関係しているか」なので、どこからどこまでが経費なのか、しっかりと線引きをしておくことが重要です。
支払ったガソリン代のうち、何割が副業で何割がプライベートなのかを明確にし、適切に申告しましょう。
在宅でできるお小遣い稼ぎ13選!副業を始める際の注意点も解説!副業で使用したガソリン代の勘定科目は?
ガソリン代は、仕訳の際に迷いがちな経費のひとつです。
勘定科目に決まりはありませんが、ガソリン代の場合は次のいずれかに仕訳するのが一般的です。
- 車両費
- 旅費交通費
- 消耗品費
- 燃料費
- 売上原価
この中のどれを使うのかは、自身が内訳を把握しやすい勘定科目かどうかで選ぶのがポイントです。
どの勘定科目を選んだとしても、仕訳の仕方によって税金が変わってしまうことはありません。
勘定科目を選ぶ際には、収支内訳書を見たときに副業の実態がわかりやすいかどうかという基準で判断しましょう。
ここからはガソリン代を副業の経費として仕訳する際の勘定科目について解説します。
副業の経費は認められる?計上できる費用・できない費用を解説!
車両費
車両費は、自賠責保険や任意保険の保険料・車検費用・自動車税や重量税・洗車代など車の維持や管理にかかる費用全般に用いる勘定科目です。
ガソリン代は車を使用するために必要な費用なので、車両費として計上することができます。
ガソリン代を車両費にまとめることで、後から帳簿を見直したときに車にかかった費用が合計でいくらになるのかがわかりやすくなるというのがメリットです。
とくに所有する車の台数が少ない場合は、車両費として計上すると処理がしやすくなるのでおすすめです。
旅費交通費
旅費交通費は、電車代・新幹線代・タクシー代・バス代・飛行機代・ホテル代・出張手当など、移動や宿泊などにかかる費用をまとめて計上する際に用いる勘定科目です。
車の使用頻度が高い場合はガソリン代を「旅費交通費」にし、車両の維持費などとは別に計上することで、ガソリン代がどれくらいかかっているのか把握しやすくなります。
使用頻度が高い人や所有している車の台数が多い人、出張が少ない場合はガソリン代を旅費交通費として仕訳するのがおすすめです。
消耗品費
消耗品費は、帳簿・文房具・用紙・包装紙などの消耗品購入費や、使用可能期間が1年未満かつ取得価額が10万円未満の備品の購入費を計上する際に用いる勘定科目です。
ガソリンも消耗品にあたるため、消耗品費として計上することができます。
しかしガソリン代は車両費や旅費交通費としての側面が強く、消耗品費は勘定科目の中でもとくに大きな費用になるので、ガソリン代を消耗品として計上することがあまり適していません。
副業のために車を使うのは年数回であまりガソリン代が発生しない場合であれば仕訳が複雑になる可能性は低いので、消耗品費として計上するのも良いでしょう。
燃料費
燃料費は、灯油・オイルなどの燃料を、単独で分類して把握したいときに用いられる勘定科目です。
ガソリンは燃料なので、燃料費として計上することができます。
燃料費として計上することで、車の維持費や管理費などとは別にガソリン代を管理できるというメリットがあります。
経費のなかでガソリン代の占める割合が高い副業の場合は「燃料費」として仕訳する方法もおすすめです。
ただし、農業で利用するトラクターなどの燃料は、燃料費ではなく「動力光熱費」として仕訳するケースがあるので注意してください。
売上原価
売上原価は、商品やサービスの仕入れや製造にかかる経費を計上する際に用いられる勘定科目です。
運送業などの副業を行っている場合、ガソリン代は売上代金に直結する「商品の原価」であると考えられます。
その場合の勘定科目は、売上原価を使います。
副業のガソリン代を経費として計上する際の注意点
ガソリン代を経費として計上する際には、注意するポイントがあります。
トラブルを回避するためにも、あらかじめよく確認しておいてください。
- 勘定科目を途中で変更しない
- 未使用のガソリン代でも貯蔵品として計上する必要がない
- 軽油車両のガソリン代に注意
- 支払内容を証明できる書類を保存しておく
- 証拠書類がない場合は別途記録を残しておく
勘定科目を途中で変更しない
ガソリン代は「車両費」「旅費交通費」「消耗品費」「燃料費」「売上原価」などの勘定科目に仕訳して計上することができます。
どの勘定科目を選んでも問題ありませんが、一度選んだ勘定項目を途中で変更してはいけません。これは、ガソリン代以外の経費にも共通するルールです。
もし途中で勘定科目を変えると、税務署から「利益操作を行っている」と判断されてしまう恐れがあります。
トラブルを防ぐため、会計期間の1年間は同じ勘定科目で統一することをおすすめします。
ガソリン代の管理が難しいなどの理由で勘定科目を変えたい場合は、会計期間が終了したタイミングで変更してください。
未使用のガソリン代でも貯蔵品として計上する必要がない
未使用のガソリンはタンクに残っているため「在庫」であると考えられ、決算時に在庫となったガソリン代は原則として「貯蔵品」として取り扱われることになります。
経理上では「経費として計上したガソリン代−貯蔵品として取り扱ったガソリン代」の数式で貯蔵品と同じ金額を経費の支出から減少させ、正確な支出額を求める必要があるのです。
しかし、燃料タンクに残っているガソリンの量を確認するのは現実的ではありません。また、ガソリン価格は日々変動するため、購入単価を正確に把握するのは難しいでしょう。
そういった背景から、国税庁の法令解釈通達では「経費として計上するガソリン代の費用が多くない場合は、貯蔵品として計上する必要はない」とされています。
軽油車両のガソリン代に注意
ガソリンと一口にいっても、「レギュラー」「ハイオク」「軽油」の3種類が存在します。もしも副業に使用している車が軽油車両の場合、取り扱いが異なるので注意が必要です。
レギュラーとハイオクはガソリン燃料にあたり、ガソリン税と石油税がかかります。
一方軽油はディーゼル車の燃料なので軽油取引税と石油税がかかり、消費税が課されません。
そのため軽油車両のガソリン代を経費として計上する際は、軽油取引税に消費税が含まれないように処理することが大切です。
支払内容を証明できる書類を保存しておく
ガソリン代を経費として計上する際は、領収書やレシートなど、ガソリン代の支払いを証明できる証拠書類を保存しておきましょう。
確定申告の際は支払いを裏付ける証拠書類が必要となり、確定申告が済んだ後も、原則7年間保存し続けておかなければいけません。
ガソリン代をクレジットカードで支払った場合は、明細書も保存しておきましょう。支払った経費の証明や、未払金の振替における証拠書類として役立ちます。
Web明細であれば、会計ソフトにそのまま読み込み可能な場合もあります。
有効に活用することで、経理業務を削減しましょう。
証拠書類がない場合は別途記録を残しておく
もしかすると、ガソリン代のレシートを紛失してしまうこともあるかもしれません。
支払った証拠書類が無い場合でも、支払いの事実さえあれば確定申告で経費に計上できる場合があります。
仕訳の際に支払った金額や日時、場所などの記録を残しておきましょう。
クレジットカード払いの場合は、明細書が証拠書類になる可能性があります。
証拠書類が無い場合に経費として認められるかを判断するのは税務署です。
信憑性のある書類が揃っているほうが有利に働くのは言うまでもないので、必ず記録を残しておきましょう。
副業に自家用車を使う場合のガソリン代の計算方法
事業専用の車がある場合、使ったガソリン代をそのまま経費として計上できます。
しかし副業の場合、事業専用の車を用意せずに自家用車を使うというケースがほとんどでしょう。
副業とプライベート両方で同じ車を使用する場合、次の2つの計算方法から計上できるるガソリン代を求めることができます。
- 走行距離で計算する
- 使用日数で計算する
ここからは副業に自家用車を使う場合のガソリン代の計算方法を解説します。
自家用車のガソリン代は家事按分を行う
自家用車の場合、副業以外にもプライベートで車を使用する機会があるため、すべてのガソリン代を経費として計上することはできません。
副業として使っているガソリン代だけを経費として計上する必要がありますが、給油したガソリンを副業用とプライベート用に分けることは非常に困難です。
こういった場合、ある一定の割合で事業用とプライベート用の費用を分けて計算します。
たとえば、ガソリン代4,000円のうち半分を副業、半分をプライベートで使ったという場合は、2,000円を経費として計上するのです。
このように、事業用とプライベート用の費用を分けることを、「家事按分」といいます。
ガソリン代を経費として計上する場合は「走行距離」「使用日数」のいずれかで案分計算します。
いずれの方法で計算する場合も、「走行距離」「燃費」「1Lあたりのガソリン代」を把握しておく必要があります。
燃費
燃費は各車種のカタログやインターネット上に出てくる燃費情報をもとに決定することができますが、カタログなどに記載されている燃費は実測値ではないため、実際の燃費と異なる場合がほとんどです。
走行距離に対してガソリンをいくら消費したのか、正確な燃費を知りたい場合は、以下の手順で実際に計算してみましょう。
- ガソリンを満タンにする
- 走行距離を確認しながら走行する
- ガソリンを再び満タンにしたときの給油量を確認する
- 走行距離÷給油量を計算する
車種によっては、平均燃費がモニターやメーターなどに表示される場合もあるので、その数値を参考にするのもよいでしょう。
走行距離
走行距離は、車のメーターの数値を確認してから出発し、到着地点の車のメーターの数値との差を計算することで求められます。
車種によってはメーターをリセットすることもできるので、出発地点でメーターを「0」にしておくことで、走行距離が簡単にわかります。
一定のルールに則って走行距離を出したいときは、Googleマップなどを使用するとよいでしょう。
1Lあたりのガソリン代
1Lあたりのガソリン代は日々変動するため、長い期間を設けて平均価格を求めることが大切です。
経費精算するガソリン代の平均価格は、周辺にあるガソリンスタンドの値段や、経済産業省・資源エネルギー庁のサイトを参考にして決めましょう。
走行距離で計算する
一つ目は、走行距離からガソリン代を求める方法です。
たとえば「年間4,000km走行し、そのうち副業で使用した分が400km、年間のガソリン代が50,000円」だった場合、副業で使用した割合は10%となり、5,000円をガソリン代として経費に計上することができます。
- 400(km)÷4,000(km)=0.1(10%)
- 50,000×10%=5,000(円)
「走行距離÷燃費×1Lあたりのガソリン代」という式にあてはめることで、ガソリン1Lあたりで何km走行できるかという燃費をもとに、事業の走行距離から使ったガソリンの量を計算して計上することもできます。
たとえば「走行距離が500km、燃費が1Lあたり10km、ガソリン単価が1Lあたり140円」だった場合は、7,000円をガソリン代として経費に計上することが可能です。
- 500(km)÷10(km/L)×140(円/L)=7,000(円)
走行距離で計算する方法は、メーター距離などを基準に計算するため多少複雑にはなりますが、正確な数値を計算したいという人におすすめです。
使用日数で計算する
二つ目は、使用日数からガソリン代を求める方法です。
月に何日車を使用したかというのを基準に計算するので厳密な数字ではありませんが、手軽に計上することができます。
週間や月間における車の使用日数が一定の人におすすめの計算方法です。
たとえば「月30日のうち6日間のみ車を副業に使用する」場合、副業で使用している割合は20%となります。
年間のガソリン代が50,000円だった場合、10,000円をガソリン代として経費に計上可能です。
「1週間のうち、2日は副業で車を使っている」という方の場合は、ガソリン代の7分の2が副業と考えることができるでしょう。
使用日数で計算することで、複雑な計算をしなくても良いというメリットがあります。
まとめ
- 副業で使用したガソリン代は経費として計上できる
- ガソリン代の勘定科目
- 車両費
- 旅費交通費
- 消耗品費
- 燃料費
- 売上原価
- 経費として計上する際の注意点
- 勘定科目を途中で変更しない
- 未使用のガソリン代でも貯蔵品として計上する必要がない
- 軽油車両のガソリン代に注意
- 支払内容を証明できる書類を保存しておく
- 証拠書類がない場合は別途記録を残しておく
- 副業に自家用車を使う場合は走行距離または使用日数から経費に計上できるガソリン代を計算する