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所得税の総合課税と分離課税
所得税は、基本的に全ての所得(10種類の所得全て)を合算して「累進税率」を適用する「総合課税」制度になっている。
(累進税率とは収入が多い人には税率を高く、少ない人には低くする税率のこと。累進税率を課税(税をかける)することを「累進課税」という。)
ただし、山林所得や退職所得は、例外として他の所得とは別枠で計算する「分離課税」を採用している。
また、土地や建物といった不動産や株などを譲渡した場合にも、総合課税に含める譲渡所得とは分離して課税する。
さらに、分離課税は「申告分離課税」と「源泉分離課税」とに分かれる。
申告分離課税は自分で税務署へ申告(自己申告)して税金を払うこと。
源泉分離課税は代金や取引金額を受け取る際に差し引かれ(源泉徴収という)て税金を払うこと。(差し引いた相手が責任をもって税務署へ払うことになる。)
所得税の計算
まず、1年間に得た各所得金額を算出し、総合(合計)する。
その際に、各所得の損益を通算したり、前年の損失の繰越控除を行ったりする。(損益通算や繰越控除については、また今度)
そうして算出されるのが「総所得金額」。
ここから各所得控除額を差引きして「課税総所得金額」を出す。
これに所得税率を適用して「所得税額」を出す。
そして、ここから税額控除や源泉徴収税額を差引きして、最終的な「申告納付税額(税務署へ納付する税金の額)」が出る。
・課税所得金額=所得(総合)-所得控除
・所得税額=課税所得金額×税率-控除額
所得税の所得控除(しょとくこうじょ)
一般に家族構成や生活状況など、生活条件は納税者(税金を払う人のこと)によってかなり異なっているので、そうした個別的条件を考慮して、できるだけ税の公平性を図ろうとする措置が「所得控除」というもの。(控除は「差し引く」といった意味)
所得控除によって、所得金額から控除することができる。
この所得控除は、全部で14種類。
納税者本人やその家族について控除される「人的控除」と、生活維持のために必要な費用について控除される「物的(その他の)控除」とに分けられる。
※各控除の詳細は次回以降に解説
人的所得控除(7種類)
基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除(寡夫控除)、勤労学生控除
物的所得控除(7種類)
雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、寄附金控除
所得税の税額控除
「所得税額」から引けるものが、税額控除。
所得控除は「所得税額」を出す前の「所得」を控除するもので、税額控除は計算し終わった「所得税額」から引けるもの。
なので、所得控除が38万円引けるのと税額控除で38万円引けるのでは、税額控除の方が圧倒的に税金が安くなる。
税額控除には「配当控除」や「外国税額控除」、住宅取得促進のために設けられた「住宅借入金等特別控除」などがある。
※各控除の詳細は次回以降に解説
税金のかからない所得
所得の中には、例外的に税金のかからないものもある。
例えば、宝くじの賞金、香典や災害見舞金等で社会通念上相当と認められるもの、またサラリーマンの転勤費用など。
社会通念上相当とは?
税務などの法律には「社会通念上相当」と良く出てくる。
これは、分厚い法律の辞典に実際に記載されている言葉で、こういう「あいまいな表現」が法律にはいくつもある。
いくらが「社会通念上相当」なのかは時と場合にもよってしまう。
例えば香典でも、有名芸能人や役員などの葬式で100万、200万は妥当だとしても、一般個人では妥当ではなかったり。
何が妥当かは「税務署職員」の采配でもあり、最終的には裁判所の判断になってくる。
こういったあいまいなラインというのは「節税」のポイントにもなってくるので要チェック。
まとめ
- 所得税の課税方法には所得を合算してから課税をする「総合課税」と個別に課税する「分離課税」がある。
- 累進税率とは収入が多い人には税率を高く、少ない人には低くする税率のこと。累進税率を課すことを累進課税という。
- 控除には所得控除と税額控除がある。
- 課税所得金額=所得(総合)-所得控除
- 所得税額=課税所得金額×税率-控除額