自動運転による衝突防止、テレワークでの在宅勤務、5Gスマートフォンの新料金プラン、スーパーコンピューター「富岳」によるくしゃみのシュミレーションなどなど・・・
耳にしないことはないくらい、日常はIT関連のニュースで溢れています。
しかし、IT業界は今、「慢性的な人材不足」に陥っているとか?
「ITに興味があるけど、IT業界は人材が不足しているって本当?」
「人が少ないITの仕事は、忙しくて残業が多そう・・・」
「人が集まらない業界だとこの先廃れてしまうんじゃ?」
人材不足のその理由は?この先伸び続ける分野だろうか?就職しても大丈夫?
そんな疑問にお答えします。
ITの今後がどうなっていくのか知りたい、IT初心者や未経験者の方、是非参考にしてみてください。
目次
IT業界は本当に人材不足に陥っているのか?
早速ですが、目覚ましい発展を遂げているイメージのIT業界が、本当に人材不足に陥っているのかどうか?
経済産業省では、少子高齢化が進む中で、人材確保が難しくなっていることに加えて、技術進展が進む IT 分野において、IT人材の需要と供給について分析予測を行いました。
IT人材の需要と供給のギャップ推移(2018 年から2030 年までの予測)を図1に示します。
このグラフは、IT関連企業の、18 歳~64 歳の人材について需要と供給のバランスを算出したものです。
需要の伸びを5~2%とした中位の予測では、2030年での人材の需要と供給のギャップ(赤丸)、つまり人材の不足人数を45万人と予測しています。
IT 人材の需要と供給の差(需給ギャップ)は、IT 需要の伸び、生産性上昇等に影響されるほか、IT 需要構造の変化による不足や余剰が生じる可能性があるとしています。
IT業界の人材が不足する理由
では、IT業界において、人材が不足してしまうのは、なぜなのでしょう?
実は以下のような理由であると考えられています。
市場の成長と技術の急成長
IT関連の人材が不足する理由のひとつとして、IT市場全体が成長していることが挙げられます。
以下の図2は、国内企業のIT投資の実態と今後の動向について予測したものです。
図2.国内企業のIT投資の実態と今後の動向
2021年は新型コロナウイルスによる業績不振の影響を受ける形で、不要不急のシステム/サービスの先送り/見送りなど、企業のIT投資が縮小傾向になると見込まれることから、市場規模は前年度比4.3%減になると予測
される一方で、
2022年度以降は世界経済が立ち直り始めることなどを背景に、5Gの本格普及が進むことや、働き方改革の推進、データを活用した取り組みの進展によるAI/IoTなどの普及、さらに、これらを受けてセキュリティ対策の必要性が高まることなどから、市場は緩やかながらも成長していくとの見通し
としています。
出典:矢野経済研究所|国内企業のIT投資に関する調査を実施(2020年)
これら市場がどんどん成長するにつれ、技術も進歩していきます。
少し前まで革新的な技術だったものが、今ではすでに廃れてしまう。
つまり、IT技術者のスキルが、追い付かない状況が起こってしまいます。
働き世代の人口の減少
少子高齢化によって、IT業界だけでなく日本中の企業全体で人材不足が起きています。
将来的にどれくらいまで働く世代の人口が減ってしまうのか、経済産業省では年代別の人口の推移の調査を行っています。
予測結果を図3に示します。
図3. 将来人口の予測
これによると、人口全体(棒グラフ)は2010年の128億人をピークでそこから少しずつ減少し、2050年には約1億人になると予想しています。
その中で、働く世代15~64歳の人口(棒グラフのピンク部分)は、人口全体よりもっと早い1995年をピークにどんどん減っています。
人口全体との比率(黒の折れ線)で見ると、2020年に60%程度だったものが2050年では50%と半分近く(赤丸)まで減少することがわかります。
参考:経産省|2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について
IT業界のネガティブイメージ
そして、IT業界には好ましくないイメージが刷り込まれています。
流行語にもなった「ブラック企業」という言葉。
これを一躍有名にした映画、「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」でブラック会社として登場するのが「IT会社」です。
これ以降、IT業界は「きつい・汚い・危険」の頭文字を取った「3K」と呼ばれるようにもなってしまいました。
事実、そんな企業で長時間労働の問題が取り上げられ、まさにIT企業のイメージの悪さが定着してしまいました。
これからのITと人材確保の対策
ITの発展とは裏腹に、技術者が減ってしまうという予想がある中、果たしてITの未来はあるのでしょうか?
IT人材育成や待遇改善
周りにITがあふれているこの状況で、ITなしでの未来はあり得るのか?日本だけが時代に取り残されてしまうのではないか?
この人材不足という状況を打開するために、様々な企業が対策を打ち出しています。
各企業とも、OJT強化による社内のITスキル向上に力を入れています。
コロナ禍でリモートワークが定着することで、拠点によらないエンジニアの活用が可能となりました。
そのため、フリーランスエンジニアとの契約を増やすなど行うところもあります。
また、NTTデータでは専門性の高い外部人材を採用する制度を推進、高度な専門知識や技術を習得している人材を年収2千万円以上で雇う制度を導入したことなども明らかになりました。
これからはただスキルを持っているだけではだめで、技術の変化にも対応できる柔軟で高度な能力が求められるのです。
この先のITの動向
分かっている人はもう始めてる…というように、実は今、子供のプログラミング市場が大きく拡大すると予想されています。
GMOメディア株式会社「コエテコ」と船井総研では「子供向けプログラミング教育市場」の今後の規模の予測を行いました。
「コエテコ」と船井総研によるプログラミング教育市場の調査によると、2020年に140億円とした市場が5年後の2025年には300億円に届く勢いで拡大するというものです。
文部科学省が推進する、小学校のプログラミング教育必修化も引き金となり、今後はプログラミングは当たり前の時代となります。
参考:GMOメディア|2020年 子ども向けプログラミング教育市場調査
働き方改革による、3Kイメージの払拭
ここで誤解を招かないように説明すると、IT企業がブラックだという話は、すべてがそうだというわけではありません。
IT業界が忙しいのは事実としても、忙しいのに給料すら支払われなかった会社がたくさんある、ということではありません。
IT業界では業界団体が中心となり、長時間労働が是正され、一時から比べても随分と無理のない働き方に変わってきています。
筆者が以前IT企業を退職する直前、ちょうど、働き方改革が行われるときでした。
残業時間の削減、従業員の体調管理の徹底、分担やシフト制などで仕事の効率を考えるようになり、さらにテレワーク、副業・兼業など、ワークスタイルやライフスタイルにあった柔軟な考え方に変わり、働きやすくなったと感じました。
今ではもっとブラッシュアップされていて、以前のような「ブラック」という言葉は、いずれ消滅するだろうと思います。
まとめ
IT人材が不足する背景には、市場の急成長と変化に対応しきれない技術革新、そして人口構造の変化があって、人材不足がさらに深刻化するということがわかりました。
しかし、それでも情報化社会は、後戻りできない状況となっていて、IT業界はこの先も拡大する市場に求められる価値を、提供し続けなければなりません。
そのため、各企業では優秀な人材が集まるよう環境整備を始めていて、採用される側もふるいにかけられることになります。
時代の変化に柔軟に対応できる、高度なスキルを持ったエンジニアが求められます。
しかし、ここで躊躇するのではなく、人材が不足する今だからこそ、スキルを磨いてチャレンジするべきではないでしょうか。