近い将来、大きな需要が見込まれているIT業界への就職または転職を考えている方に関するお話しです。少し調べていくと「IT業界は35歳で定年」という言葉が目に付いたことはありませんか?
そんな不安を感じているかたのために、この記事ではIT業界の実情と、35歳の壁の乗り越えるための、キャリアイメージについて紹介しています。
そもそも、「35歳で定年」とは
IT業界で「35歳で定年」というのは最近になって言われ始めたことではなく、20年ほど前にはすでにSE(システム・エンジニア)は35歳までということが、まことしやかに囁かれていました。
これは、変化が激しい現場では様々な面から若さが有利になることが多く、ある程度の年齢になると市場価値が下がるということを、極端に皮肉として表現されたことに始まります。
IT業界のエンジニアと一括りにいっても、その種類は幅が広いです。
フロントエンドエンジニア、マークアップエンジニアはウェブデザインを実装するのが仕事ですし、ウェブアプリケーションを開発するエンジニア、AIエンジニアも、それぞれ専門が違います。
例えばネットワークエンジニアという仕事は一昔前にもありましたが、最近では、IoT(モノのインターネット)そしてモバイルゲームアプリケーションのエンジニアは不足していると言われています。このように数年毎に次々と新しいジャンルが増えていきますので、同じ言語も長年の蓄積で使えるわけではありません。
一般的な技術職のように、経験と共に自然とスキルアップしていく業界とは違い、常に新しいスキルを習得していかなければ、短い期間のうちに使い物にならなくなってしまうのです。
日常の現場をこなしながら、次世代言語の勉強をする為には、身体的な体力も必要です。
また、30代も半ばといえば、給料もそれなりに上がってきます。経営の立場で考えますと、高い報酬を出したくないと考えることは自然なことです。これが、大工なら3年目と13年目の差は報酬の差も致し方ないのですが、IT業界では、10年前のプログラミング知識が直接活かせるわけではありません。
そうすると、中堅以上は現場を離れ管理職として会社に残るか、その業界自体を離れてしまうことにもなりかねません。
こうして、「35歳で定年」ということが、いつの間にか定着してしまったのです。
IT業界の雇用は予想通り拡大
それでは、最近の業界事情をお話ししましょう。
まずお伝えしたことは、「35歳で定年」という説は、すでに崩壊しつつあるということです。
総務省の「令和2年版情報通信白書」によると、2018年の情報通信産業の国内生産額は99.1兆円。これは、全産業の9.8%と、最大規模の割合になります。これに応じて、同年の情報通信産業の雇用者数は404.5万人。2016年から2017年の雇用数の増加が0.5万人程度だったことを考えると、2017年から2018年5.5万人の増加ということなので、雇用は加速度的に増えているのです。
この404.5万人という雇用数は、全産業の5.7%に相当しますので、日本で働く人の17~18人に一人はIT業界で働いているということになります。
今後も、ITエンジニアの供給が不足するということは予想されておりますので、条件さえ満たせば決して35歳で居場所がなくなることはありません。
35歳までにやるべきこと
さて、エンジニアの需要はますます増え続ける見込みとはいえ、年を重ねても楽して居続けられる業界ではなさそうです。若いうちに考えておくべきやるべきことを考えてみましょう。
どの業界でもスペシャリストと呼ばれる人は、一朝一夕でなれるわけではありません。若いうちからの積み重ねが重要です。たとえばSEの5年毎のロードマップとしては次のようなことが考えられます。
25歳まで
情報処理の基本を学ぶこと。プログラミングは、環境が整っていればどの言語でもかまいません。
すでに就職しているかたなら、現場の最前線で使われている言語を積極的に勉強するのが良いでしょう。就職活動中の学生であれば、自分が志望している業種でよく使われている言語を調べて、ある程度独学してみるという姿勢は大切です。
システム全般の基本も押さえるべきです。ハードウェア、OS(オペレーティング・システム)、データベース、通信・プロトコル(異なるコンピューターが、通信するために制定された手順のこと)、その他、OS下でのプログラム動作なども理解しておくことが必要です。
手始めに、ITパスポートの合格を目指してみるというのは、わかりやすい目標でしょう。
参考:ITパスポート(https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/index.html)
チームの一員として業務フローについても学びましょう。会社特有のルールもそれぞれにありますが、どの会社でも共通していることも多くあります。自分の手元にきた仕事をこなすだけでなく、社会人として全体の流れを見渡せるようにしておくと、受注の際に顧客の業務に対しても理解しやすくなります。
全体の流れを大まかに把握しておくことは実務上もメリットがあります。必要な人と関係を構築し相談しやすくしたり、逆にトラブルメーカーになりやすい人などが知っておいたりすることで、業務を円滑に進めやすくなります。
具体的には、システム構築の流れやプロジェクト管理について理解しておくとは大切です。この年齢では、実際のプロジェクト管理は先輩の仕事になるかと思います。要求されるレベルに答えられるかと言うことに合せて、全体を見渡しておく癖はつけたいものです。
SEであれば、顧客対応の機会も多くあります。
上司や先輩に同行する中で、顧客の話をよく聞き、会話の内容で理解できない部分が無いように勉強をしていきましょう。
30歳まで
ITエンジニアの世界では一番脂がのった世代と言っても良いのではないでしょうか。
20代も前半は、先輩の後に付きながらというケースが多かったと思いますが、顧客とも直接的な関係になってくる機会が増えます。
システムの構築をする経験も責任ある立場で経験できる年齢です。
ただ、あまりに大きなシステムだと、一部だけを担当して全体が見えないので、理想的には受注から運用後の保守まで自分の目が届くような環境だと良い経験になりますね。
おそらく、自分の責任において失敗をすることもあるでしょう。
その時は、大変かもしれませんが、長い目でみると、きっとそれは貴重な経験になります。
顧客から、実装が難しい要求をされたり、予期せぬクレームがきたりとトラブル折衝も経験しなければいけません。
システム開発には顧客の業務を知ることはとても重要です。どのようにして知識を得るかという方法も、この年代のうちに身につけておきたいことです。そのためには、円滑にコミュニケーションをとる能力も育てる必要があります。これは、顧客に対してだけでなく、社内に対しても同じことです。
そうして、例に挙げているSEであれば、顧客にとって頼れる存在へと成長する必要があるのがこの年代です。
直接顧客に会わないジャンルのエンジニアでも、一人で担当をこなし、社内でもある程度任せられるようにならなければ、このあと、居場所がなくなってしまうのは言うまでもありません。
35歳まで
顧客の要望からシステムを上手く動かすノウハウを学びます。
要望を全て鵜呑みにして実装することが最高のシステムとは限らないことは、十分に気付いている年齢です。
顧客のキーパーソンと接触し、相談相手となっていくこともあるでしょう。
さらに、ワンランク上のコミュニケーション能力が問われます。
この年齢で活躍していれば、管理職への道も開かれていることでしょう。プレイングマネジャーとして、最前線にやりがいを感じるかたもいるかもしれません。
その後については、学ぶ意欲をもって自主的に最新技術について勉強し続けること。そして、自己管理を徹底し体力的な面でも後輩に遅れをとらないことに気をつけていけば、まだまだ現場での現役続行も可能です。
昨今は、個人で外注を受ける仕組みも多くありますので、フリーランスという道も、昔よりはるかに敷居が下がりました。
まとめ
いかがでしたか?
「35歳で定年」という言葉に不安を感じているかたのために、現在の業界の様子や、キャリアのイメージについて書きました。
ITエンジニアの需要は確実に増えていますし、コミュニケーション能力やトラブル解決能力は、経験豊富な方が有利です。ただし、35歳の壁を乗り越えるためには、絶え間ない努力が必要です。
これから業界に飛び込みたい皆さんは、勇気を持ってチャレンジしてくださいね!