ここ数年、会社に所属せずフリーランスとして働くと言う形態が注目されています。会社勤めでスキルや知識が増え独立に興味を持ち始めた方も多いでしょう。
その反面、フリーランスになるために、まず何を準備したらいいのか分からないため、踏み出せない方もいる事と思います。
そこで今回は、フリーランスになる際に準備しておく事を見ていきます。
これからフリーランスになろうと思っている方、準備不足もあり悩みながらも開業した方、是非最後までご覧ください。
目次
フリーランスとはどのような働き方か
フリーランスとは一般的に特定の会社等の企業や組織に所属せずにプロフェッショナルとして自身の専門的技量を提供する事によって報酬を得る働き方を指します。会社などに雇用される働き方とは違い、ひとつひとつの案件ごとに業務契約を交わし、業務を遂行します。自由な働き方と言う事が大きなメリットの一つです。
上記の他に一人で会社を設立し同じような働き方をしている場合もフリーランスと呼ぶ場合もあります。
個人事業主
個人事業主(個人事業者)は事業や税制上の区分です。会社等に雇用されるのでは無く、法人(会社)を設立せずに個人で事業を行っている場合を個人事業主となります。個人事業主と対になる言葉が法人です。
会社や組織に所属せずに働くという事を考えますと、フリーランスで働く場合は個人事業主として事業を行う事が基本です。
フリーランスと個人事業主との違い
フリーランスと個人事業主との違いは双方が指し示すものやそれぞれが対象とする事業にあります。その時々に応じてどちらの言葉を使用できるケースもありますし、区別すべきケースもあります。
例を挙げると「フリーランスなので、今期はコロナの影響で収入が下がった」と言う事であれば、個人事業主で通用します。
一方で「当社は法人としか契約できない」という話であれば、個人事業主のフリーランスは契約できませんが、法人を設立しているフリーランスの場合は交渉する余地が残っています。
個人事業主の対象とする事業が幅広い為、個人事業主であってもフリーランスではないと言う事業や職種はあります。
例を挙げると法人を設立していない個人商店、農業、漁業に携わる方は個人事業主となりますが、「案件ごとに業務契約を結ぶ」「自身の専門的技量を提供する」というフリーランスの働き方とも違うのでフリーランスとは呼べないでしょう。
フリーランスの定義
「フリーランス」に明確な定義はありません。但し中小企業庁の2019年版の小規模企業白書では下記のように定義しています。
「フリーランス」については、明確な定義がないため、本白書では、「特定の組織に属さず、 常時従業員を雇用しておらず、消費者向けの店舗等を構えておらず、事業者本人が技術や技 能を提供することで成り立つ事業を営んでいる者」をフリーランスと定義する。
「出典:中小企業庁 2019年版 小規模企業白書|第2章フリーランス・副業による起業」
上記の定義からも「組織に所属さない」「技術や技能を提供する」と言った点がフリーランスの要件になります。
このようにフリーランスの定義であったり解釈には幅があります。また、時代とともに新しい職種なども出てきます。
その他「自由業」「ノマド」「SOHO」等もフリーランスと同じように扱われる場合も出てきます。
フリーランスの仕事内容
一口にフリーランスと言っても様々な職種があります。ここでは具体的にどのような事をするのか、フリーランスの仕事内容を見ていきます。
エンジニア系
フリーランスプログラマー
Java、PHP、PythonやRuby等のプログラミング言語を使い、Webサイトやアプリケーションまたはゲーム等のシステムの構築を行います。
SE(システムエンジニア)が作った仕様書を元にして要件を満たすプログラムを書くことがプログラマーの仕事です。
昨今デジタルトランスフォーメーションが注目を浴びていますので、即戦力として各々のプロジェクトに貢献できるフリーランスプログラマーの需要は高いです。
フリーランスSE
SEとは顧客の要望を受けてシステムの要件定義・設計を行い、そのシステムの動作確認が主な仕事となります。
顧客が要望を汲み取り、プログラマーの協力を得て開発を進める事が職務となるので、フリーランスとして活躍するためにはプログラミングの知識の他にコミュニケーション能力やマネージメント能力も大事です。
フリーランスWebエンジニア
WebエンジニアとはWebサイト、Webアプリケーションの開発を行う職種です。プログラミングを中心として企画を始め設計、運用、保守に関わる場合もあります。同じWebエンジニアでもユーザーから見える部分の開発を行うエンジニアを「フロントエンドエンジニア」、ユーザーから見えない部分の開発を行うエンジニアを「バックエンドエンジニア」と呼ばれています。
デザイナー・クリエイター
フリーランスWebデザイナー
Webデザイナーは、Webサイトの構成設計やデザイン、コーディングを担当します。photoshop、illustrator等のグラフィックデザインのソフトを使いこなすスキルやHTMLやCSS、JavaScript等のコーディングに必要とされるマークアップ言語、スタイルシート言語、プログラミング言語の知識も必要とされます。
更にUI/UXデザインやライティング、SEO、アクセス解析等のWebサイトの制作や運用の知識を身につければ受託できる案件の幅が広がります。
フリーランスイラストレーター
イラストレーターはクライアントの要望を受け、Webサイトやゲーム、本、商品のパッケージ等のイラストを制作する仕事です。
制作環境としてはphotoshop、illustratorの他にSAIやCLIP STUDIO PAINT等のイラストを制作するのに特化したツールを使用する事もあります。
グラフィックデザイナーや画家、漫画家と兼業で活躍している人もいます。
フリーランスWebディレクター
WebディレクターはWebサイトの制作や運用に携わる職種の業務を取りまとめ、プロジェクト全体を管理します。適切なリソース調整や進捗管理等のマネージメント能力やコミュニケーション能力が必要になります。
Webマーケティングやプログラミング、デザインの知識を持っているとそれぞれの職種へ適切な指示が出せます。
高レベルで高単価となる案件を獲得するためには幅広い知識を持つことが大事と言えます。
フリーランスグラフィックデザイナー
主に雑誌、新聞の広告やチラシ、ポスター、商品のパッケージ等の印刷物のデザインを担当する仕事です。しかし、Webサイトからゲームやファッション、建築等グラフィック制作全般をグラフィックデザイナーと呼ぶこともあります。
案件を獲得するためには自身の専門的技量をクライアントに信用してもらう事が大切になるので、広告代理店、制作会社から独立すると言う事が一般的になります。
ライター系
フリーランスライター
ライターとは文章を書くことに加えて、必要に応じ調べ物をしたり、取材であったり、インタビューをするのもライターの仕事です。
担当する業務内容によってWebライターやコピーライター、シナリオライター、テクニカルライターなどに分類されます。
一般的にフリーライターと呼ばれています。
フリーランス編集者
編集者とは書籍や雑誌、Webメディア等のコンテンツの企画、編集、管理が仕事です。ライターやカメラマン、漫画家イラストレーター等とコミュニケーションを取りながらコンテンツ内容であったりスケジュール調整が主な仕事となります。
この仕事の性質から編集者は独立以前に案件を受注したり、制作依頼が出来るようにコネクションを持っている事が多いです。
フリーランスにはこれらの仕事以外にもカウンセラー、カメラマン、You Tuber、講師、美容師等があります。
フリーランスの働き方の特徴
フリーランスの仕事内容が分かったところで、フリーランスの特徴を見ていきましょう。
ひとつひとつの案件ごとに業務受託契約
一つの案件を受けるごとに業務受託契約を結ぶ点がフリーランスの大きな特徴で業務委託の場合、案件の種類や業務の内容によって請負契約か準委任契約に大別されます。
例えばエンジニアでアプリケーションの開発を依頼され納品するような案件は請負案件となり、クライアントの企業に常駐して作業するような案件は準委任契約となる事が多いです。
労働基準法の対象外
業務委託と言う形で契約するフリーランスは労働者には含まれないのが原則です。と言う事は労働基準法の適用対象にはならないと言う事です。
よく言われる最低賃金であったり、割増賃金と言う概念はないので気を付けないとギャラやスケジュールの調整次第では割に合わなくなってしまいます。
もちろん休日の規定もありませんし有給休暇と言う物も存在しませんので無理をして体を壊してしまうと稼働が減り、かえって収入が減ってしまいます。
収入が不安定
フリーランスはその時の案件の有無や契約内容、支払いの取り決めによって報酬を受け取るタイミングが一定化せず、収入が不安定になりやすい点が特徴としてあります。
仕事が切れた時にどのようにして仕事を探すか、その時の為にお金をどれだけ蓄えておくか等はフリーランスならではの悩みと言えます。
スキルなしの未経験では難しい
そもそもフリーランスとは専門性の高いスキルをクライアントに提供する事で報酬を得る働き方である為、スキルなしの未経験では仕事の依頼は難しいでしょう。
また、会社員であれば将来を見越してスキルなしの未経験から育成していく場合もありますが、フリーランスはプロとして即戦力としての働きが期待されているためクライアントからの教育を期待する事は厳しいです。
フリーランスになる事は簡単と言えば簡単ですが、生活していく事を考えるとスキルアップや営業活動が必要です。
フリーランスと直接雇用のメリット・デメリット
フリーランスと直接雇用それぞれにメリット・デメリットがあります。
下表にまとめました。
項目 | フリーランス | 直接雇用 |
生活 | 生活に自由が多い | 生活が安定している |
収入 | 不安定(契約次第) | 固定(給与) |
仕事 | 選択する余地あり | 決められた仕事もある |
教育 | 自分でキャッチアップする | 研修、部署移動有 |
福利厚生 | 任意 | 会社で整備 |
社会的信用 | 低い場合がある | 基本的に高い |
上記の表を見ても分かりますが、フリーランスには自由度の高さと言うメリットが、直接雇用の場合は暮らしを安定させることが出来るメリットがあります。
フリーランスの場合業務の量はその月の契約次第なので、決まった収入が毎月と言う状況は難しいでしょう。一方で直接雇用の場合は決まっている給料日に固定額の給与が支給されます。
また、昇給に関しても、フリーランスは自分の成果や実力次第になりますし、クライアントと交渉する力も必要となります。直接雇用の場合は、評価制度などがあるので、定期昇給のチャンスがあります。
仕事内容については、フリーランスは経験次第と言うところもありますが、ある程度は選択の自由があります。一方で直接雇用の場合は自分で仕事を選ぶ事は出来ませんし、与えられた仕事は責任をもって終らせなければなりません。
また、自分のスキル向上の為に学ぶには、フリーランスの場合は自ら勉強の機会を作らなければなりません。
一方で直接雇用の場合は研修制度であったり、人事異動で教育の機会が与えられます。
福利厚生については直接雇用の場合は企業にて社会保険が完備されていますが、フリーランスの場合は自身で契約しなければなりません。
社会的信用という面でもフリーランスはまだ低めです。それでもフリーランスの人口が増えてきている事もあって、若干状況が変化してきているようです。
以前はフリーランスではクレジットカードやローンなどは厳しかったですが、その難易度も下がってきています。
フリーランスになる前に考えておいた方がいい事
フリーランスになるためには、いろいろ準備が必要です。ここではフリーランスになる前に考えをまとめておいた方がいい事を見ていきましょう。
キャリアプラン
フリーランスになろうとした場合、ここが一番大事な事です。会社から独立してフリーランスになるのであればマイナス思考の理由では無く、働き方としてこれがベストなのかどうか考えて決める事が大切です。
当然の事ではありますが、働き方が変われば、生活の基盤や自分自身、家族の生活が変わります。
フリーランスを考えるようになるタイミングとしては、ワークライフバランスを充実させたい等と感じるようになった時が多いのではないでしょうか。
または、キャリアチェンジを考える方もいるでしょう。
自身の思い描くワークライフバランスを思い浮かべるとフリーランスを選択する意義が見えるでしょう。
その時には、今後の生活で必要になる金銭を意識し、今後の生活レベルをどのレベルで保つのかも考えておきましょう。
フリーランスとしての出発点
理想のフリーランスの始め方は、取り敢えず現職を継続し、副業としてフリーの立場で何らかのプロジェクトに参加すると言うのがおすすめです。
また、現職の会社などでWワークが認められているのであれば、現職を続けながら本格的にフリーの仕事を受けると言うのもありです。
現職と同時に別の事を行うと、大変さとやりがいが同時に感じられるでしょう。
会社員からフリーランスになった方の話を伺うと「会社員は会社のバックアップがある良さやいつも側に誰かがいる良さを感じられる。フリーランスは社内の人間関係、しがらみ、承認などが不要でやりやすいものの寂しさも感じる」との事です。
副業としてフリーランスを始めると両方が体感できますから今後の見通しも見えてくるでしょう。
仕事内容やブランディング
フリーランスが自分に合っているとなったら、次はフリーランスとして受ける仕事内容やブランディングを考えます。
フリーランスは自分で売り込みを掛けなければなりません。自分自身の強みを分析すると共に出来る事を複数見つけ掛け算で考えましょう。
例を挙げるとエンジニア開発×プロジェクトマネージャーという感じです。
同時に自分のやりたい事と選ばれやすい事のバランスも大事です。
クライアントやエージェント向けの自己PRをよく考え、選ばれるための書類作成やポートフォリオ、HPも準備しましょう。
フリーランスになる前に準備する事
審査が必要なもの
会社員と比べるとどうしてもフリーランスは社会的信用度が低くなってしまう傾向にあります。例えばクレジットカードの申請やローンの契約、不動産契約の審査が通りにくくなる場合があります。社会的な信用が必要となる契約は、会社にいる間に済ませておきましょう。
特に注意を要するのが、必要な時にお金を借りると言う事も難しくなると言う事です。
社保・年金の切り替え
会社を退職した後は、健康保険と年金の手続きが必要です。健康保険の被扶養家族になる場合は費用は安くすみます。それ以外の場合は今までの会社の健康保険を任意継続するか、国民健康保険に加入するかのどちらかです。
任意継続を希望の場合は退職後20日以内に申請すれば2年間継続して加入する事が出来ます。但し、会社員の時は一部会社が負担してくれていましたが、退職後は全額負担となります。また、20日を過ぎてしまった場合は一切受け付けてくれません。
一方で国民健康保険は会社を退職した後14日以内に市町村役場に届け出ます。国保の場合は前年度の所得に応じて保険料が決定します。その計算方法も地域ごとに異なりますのでどちらに加入するべきか確認するといいでしょう。
青色申告承認申請
会社員時代は確定申告は会社で手続きをしてくれましたが、フリーランスは自分でやらなければなりません。
確定申告には「白色申告」「青色申告(単式簿記・複式簿記)」の3種類があり、それぞれ控除額に違いがあります。
単式簿記は10万円、複式簿記の場合は65万円の控除を受ける事が出来ます。
控除額が大きい程申告の作業の手間が大きいです。
手間がかかるのを避ける意味で1年目は白色申告を選択すると言う事もできますし、初年度から青色申告を選ぶ事も出来ます。青色申告を選択した場合は青色申告承認申請書を予め提出しておかなければなりませんので開業届提出の際に合わせて提出しておきましょう。
事業用の銀行口座開設
従来から銀行口座はお持ちだと思いますが、プライベートの口座と事業用の銀行口座を分けないと入金、出金がどちらのものか分かり難くなり、帳簿に記載する際手間暇がかかってしまいます。
帳簿会計は慣れていないので、ただでさえ面倒に感じますので、経費の入力などを簡単にする為にも口座は分けておきましょう。
その他に用意しておくべきものは請求書や見積書、納品書などの雛形、事務用品やデスク回りの備品、PC、プリンター、名刺、事業用メールアドレスなどです。
まとめ
今回はフリーランスになる際に準備しておく事を見ていきました。
いかがでしたでしょうか?
会社に所属せず、フリーランスになると言う事は自由に仕事ができると言うイメージがありますが、営業や経理も全て自分でやらなければならないと言う大変さもあります。フリーランスになる場合は良いスタートを切る為にも準備は事前に済ませておきましょう。
今回は基本的なことをご紹介しましたが、案外後回しになってしまう事も多いものです。是非、参考にして準備を進めてください。