プログラミング教育とは?必修化のねらいから実践例まで解説!

2020年度から小学校で必修化された「プログラミング教育」ですが、実際どのようなことを授業で行うか分からない、という方もいらっしゃいますよね。

  • 小学校でプログラマーを育成するってこと?
  • プログラミングっていうんだからコーディングするんだよね?
  • 何で小学生からプログラミングを勉強しなきゃいけないの?

様々な疑問があるかと思いますが、この記事ではそんな「プログラミング教育」の基礎知識を説明いたします。

プログラミング教育導入の背景

日本の小学校におけるプログラミング教育の導入の背景にあるのは、一言で表すとすれば、それは“社会の大きな変化”と言えます。

社会の大きな変化というのは、『第4次産業革命』とも呼ばれる時代の変化です。皆さんの身近なところにも既に現れ始めていますが、人工知能(AI)やIoTによって生活がより便利になったりより豊かになったりする時代の到来がこの先予測されています。

そして、『第4次産業革命』により社会や生活が大きく変わることで、人類史上5番目の社会である『Society 5.0(ソサエティ5.0)』の到来が予想されています。その社会の到来により人々の暮らしは豊かになる一方で、人工知能によって今ある仕事の半数近くが自動化される可能性が高いという未来予測もあるほどです。

子どもたちがそういった激動の時代や新しい社会を生き抜くために、より身近となるコンピュータ等の仕組みを知り上手に活用することが、どのような職業に就くことになったとしても極めて重要になると考えられています。そのために必要な資質・能力を育む教育の一つがプログラミング教育というわけです。

プログラミング教育のねらい

プログラミング教育の導入の背景が分かったところで、そのねらいはどこにあるのでしょうか。ただただコンピュータを使えるようにするだけではなさそうですね。ねらいは3つありますので一つ一つ解説していきます。

プログラミング的思考を育むこと

ねらいの一つ目は「プログラミング的思考を育むこと」です。

さて、プログラミング的思考とはどのような思考なのでしょうか。聞き慣れない言葉かと思います。それもそのはずで、プログラミング的思考は有識者会議による造語(新語)です。有識者会議の「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」では次のように説明されています。

自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力

引用:小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)|文部科学省

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm

どうやら論理的思考の一種だと捉えられますが、同じく有識者会議による議論の取りまとめには、次のような補足もあります。

いわゆる「コンピュテーショナル・シンキング」の考え方を踏まえつつ、プログラミングと論理的思考との関係を整理しながら提言された定義である。

引用:小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)|文部科学省

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm

ここで言われている「コンピュテーショナル・シンキング(計算論的思考)」とは、提言された原典を要約すると「コンピュータ科学者のように考えて問題を解決する」ことだと捉えられます。(Jeannette M.Wing:Computational Thinking, Communications of the ACM, Vol.49, No.3, pp.33-35(Mar.2006))

すなわち、プログラミング的思考とはただの論理的思考ではなく、課題解決に必要な思考だと言えます。そして、プログラミング的思考によって次のようなことが期待されています。

こうした「プログラミング的思考」は、急速な技術革新の中でプログラミングや情報技術の在り方がどのように変化していっても、普遍的に求められる力であると考えられる。また、特定のコーディングを学ぶことではなく、「プログラミング的思考」を身に付けることは、情報技術が人間の生活にますます身近なものとなる中で、それらのサービスを受け身で享受するだけではなく、その働きを理解して、自分が設定した目的のために使いこなし、よりよい人生や社会づくりに生かしていくために必要である。言い換えれば、「プログラミング的思考」は、プログラミングに携わる職業を目指す子供たちだけではなく、どのような進路を選択しどのような職業に就くとしても、これからの時代において共通に求められる力であると言える。

引用:小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)|文部科学省

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm

ここからは自ら設定した課題をプログラミング的思考で解決し、よりよい人生や社会づくりをしてほしい、という想いが読み取れます。

コンピュータを活用してよりよい社会を築いていこうとする態度を育むこと

ねらいの二つ目は、コンピュータを活用してよりよい社会を築いていこうとする態度を育むことです。これは、知識や技能、思考力などを育むというよりも、学びに向かう力や人間性等を育もうとしている点に注意が必要です。

「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」では次のように説明されています。

有識者会議「議論の取りまとめ」の「発達の段階に即して、コンピュータの働きを、よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度を涵養すること。」とは、児童にとって身近な問題の発見・解決に、コンピュータの働きを生かそうとしたり、コンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとしたりする、主体的に取り組む態度を涵養することを示しています。また、他者と協働しながらねばり強くやり抜く態度の育成、著作権等の自他の権利を尊重したり、情報セキュリティの確保に留意したりするといった、情報モラルの育成なども重要です。

引用:小学校プログラミング教育の手引(第三版)|文部科学省

https://www.mext.go.jp/content/20200218-mxt_jogai02-100003171_002.pdf

「主体的に取り組む態度」や「他者と協働しながらねばり強くやり抜く態度」は、どのような職業に就くことになったとしても必要となりますよね。そういった人間性を育むことをねらいとしています。また、「情報モラルの育成」という観点も重要であるとしています。

教科等での学びをより確実なものとすること

ねらいの三つ目は、教科等での学びをより確実なものとすることです。これについては、例が挙げられています。

「各教科等での学びをより確実なものとする」とは、例えば、算数科において正多角形について学習する際に、プログラミングによって正多角形を作図する学習活動に取り組むことにより、正多角形の性質をより確実に理解することなどを指しています。

引用:小学校プログラミング教育の手引(第三版)|文部科学省

https://www.mext.go.jp/content/20200218-mxt_jogai02-100003171_002.pdf

すなわち、各教科等の学習による理解を助けるのにプログラミング教育を用いる、ということだと言えます。

プログラミング教育の3つのポイント

ここまでプログラミング教育の基礎知識を説明してまいりましたが、小学校におけるプログラミング教育のよく誤解されているポイントについて、3つご紹介いたします。プログラミング教育を正しく理解しましょう。

独立した教科ではない

小学校におけるプログラミング教育では、「プログラミング」という教科が新しく作られたわけではありません。先に述べたねらいの三つ目にもありますように、プログラミング教育は「各教科等」で行われます。

すなわち、算数や理科といった教科や、音楽や図画工作といった実技教科、総合的な学習の時間などにおいて、プログラミング教育が行われるということです。

なお、中学校段階では技術・家庭科の技術科において、高校段階では情報科においてプログラミング教育が行われます。

プログラミングの習得をねらいとしていない

小学校におけるプログラミング教育では、プログラミングの習得をねらいとしていません。それよりも、先に述べたねらいにある力や態度を育むことが重要なのです。

そのため、小学校段階においては、「Scratch」といったコードを書かずにビジュアルでプログラミングができる言語を使用したりもします。

Scratch(https://scratch.mit.edu/

パソコンを使わなくてもいい

小学校におけるプログラミング教育を行う上では、パソコンを使用しなくてもいい、とされています。「アンプラグドコンピュータサイエンス」という学習法があり、それは紙と鉛筆で行われます。この学習法により、プログラミング的思考を育もうということですね。

なお、またもや聞き慣れない言葉が出てきましたが、「アンプラグド」とはアルファベットで書くと「unplugged」、すなわち「プラグを抜いた」という意味で、つまりはコンピュータを使わないということになります。

プログラミング教育の実態

さて、2020年度から導入されたプログラミング教育ですが、どのような授業が行われているのでしょうか。文部科学省では「小学校を中心としたプログラミング教育ポータルサイト」において、実施レポートを収集・掲載しています。

「小学校を中心としたプログラミング教育ポータルサイト」(https://miraino-manabi.jp/

このポータルサイトにおいて、現在540以上ものレポートが掲載されています。(2021年2月7日現在)

北は北海道、南は沖縄まで日本全国でプログラミング教育が行われていることがうかがい知れます。

プログラミング教育は未来の社会を生き抜く子どもを育むために重要!

いかがでしたか?今回は「プログラミング教育とは?必修化のねらいから実践例まで解説!」についてご紹介いたしました。プログラミング教育を正しく理解して、今後社会で活躍するであろう子どもたちを応援してきましょう。

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