コロナ禍ということもあり、近年は在宅ワークや副業として自宅で仕事をする方も増えていますが、在宅ワークをしていてかかってくる費用についてどこまで経費にできるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、自宅での仕事の際にどの項目が経費にできるのかどうかを解説します。経費の申告は確定申告の際、節税対策として重要です。経費として申告できるものとできないものについて理解を深め、記録を残しておくようにしましょう。
目次
在宅ワークを自宅でする際に経費にできる項目は?
在宅ワークや副業の場合でも、基本的に仕事中に発生したお金は「経費」として申告することができます。
経費の種類には全額経費にできる項目と、一部を経費にできる項目、経費にできない項目とがあります。
経費として申告された分は所得控除の対象となり、経費として申告できるものをしっかりと計上することは節税対策にも有効です。
経費として使ったお金はレシートや領収書を保管しておき、確定申告の際に慌てないようにしましょう。
全額経費にできる項目
全額経費にすることができる項目には、仕事に必要な備品や消耗品などの購入品や、仕事でかかった費用などがあります。
仕事に必要な備品・消耗品
パソコンやプリンターなどの備品、仕事のジャンルに応じたソフトの購入代金、文房具などの消耗品など、在宅ワークで必要となる備品や消耗品は経費として申告することができます。
自宅を仕事場にしている方ならば、作業するために購入したデスクや椅子などの家具も経費として申告することが可能です。
在宅ワークで必要とされるものの例としては次のようなものが挙げられます。
- パソコン
- デスクや椅子
- 制作に使うための道具費や仕入れ費
- プリンター
- ビデオカメラ
- 照明器具
- officeや動画編集、イラスト作成のためのソフトウェア
ただし、金額が10万円以上のものは「減価償却費」としての計上が必要となる場合があります。減価償却とは高価で数年にわたって使用するものを数年にかけて経費としていくことをいい、資産に応じて年数が決められています。
また、事業としての用途以外に私生活でも使うという場合には、費用の按分が必要となるため注意しましょう。
交通費・出張費
クライアントとの打ち合わせの際の交通費や取材するための費用、出張にかかるお金なども経費として申告することができます。
一部を経費にできる項目
自宅を仕事場にしている場合は、家賃や光熱費、インターネット通信費などの項目も経費として認められます。
ただし、上記の項目は仕事に関わる割合のみ申請が可能です。仕事と私生活の両方で使用する費用については「家事按分」という合理的に定められた割合で区分することによって、その一部を経費として申告することができます。
家事按分は仕事に使っている時間や日数・部屋の面積などを基に設定された「按分比率」という割合を使って計算します。
家事按分の割合は明確に決まっているわけではありませんが、一般的に部屋の半分を使用してフルタイムで仕事している場合は50パーセント程度が目安となります。
家賃・光熱費・通信費
自宅で仕事をする場合、その分の家賃や電気代などの光熱費・インターネットや電話代などの通信費といった固定費が発生するため経費として認められます。
家賃であれば使用面積の割合、光熱費や通信費については労働時間の割合で計算することが多く、不適切な金額で申請すると税務署から確認されることもあるので気をつけましょう。
自宅以外に事務所や店舗がある場合は、その住居管理費用を経費として申告できます。事務所をもたずにコワーキングスペースなどで仕事をしている場合には、施設の月額料金を経費として計上することも可能です。
経費にできない項目
確定申告では、経費として申告できない項目もあります。在宅ワークの場合は仕事とプライベートとの境目が曖昧になりがちな面もあり、節税対策のためにできるだけ多くを経費として計上したいと考える方もいるでしょう。
しかし、あくまでも経費は仕事で必要となったものを購入するためのお金であり、私生活とはきっちりと分けて申請する必要があります。
悪質な経費の申請を行う場合には税務署から指摘されることもあるため、必要経費のレシートや領収書などはプライベートなものとは分けておくようにしましょう。
税金や保険料
所得税や住民税などの税金や、国民健康保険や生命保険などの保険料は経費として申告することはできません。ただし、所得税における社会保険料控除や生命保険料控除を受けることはできます。
また、仕事で使用したとして家事按分した固定資産税や、印紙税や事業税などの仕事で必要となったものについても経費にできます。
プライベートで使うもの
自宅で仕事をするとはいえ、何でもかんでも経費にできるわけではないので気をつけましょう。デスクや椅子以外の仕事とは関係のない家具や、仕事中の飲食代などは経費として認められません。
ただし、クライアントとの打ち合わせなどで提供したお茶や菓子などについては経費と認められる場合もあります。
自宅で行う在宅ワークで確定申告は必要?
仕事などで得た収入には所得税がかかります。所得税とは稼いだ金額に応じてかかってくる税金のことで、確定申告は1年間の所得税を計算して税務署に申告し、税金の過不足がないか確認する制度です。
個人事業主はもちろんですが、内職や副業で在宅ワークをしている場合でも原則として確定申告が必要です。
確定申告と聞くと、慣れないうちは「面倒」や「手続きが大変」といったマイナスイメージをもつ方も多いですが、しっかりと申告することで税金が還付される場合もあります。
ここからは確定申告が必要なそれぞれのケースについて解説します。
本業で在宅ワークをしているケース
在宅ワークや内職を本業としているケースでは、前年の所得が48万円を超える場合確定申告を行う必要があります。
所得とは、収入額から必要経費を差し引いた金額のことをいい、年間所得が2,400万円以下の場合は48万円の基礎控除を受けられます。基礎控除とは2,400万円以下の納税者を対象として控除を受けることをいいます。
在宅ワークでの所得が48万円以下なら基礎控除48万円を差し引くと所得は0円なので、確定申告を行う必要はありません。
副業として在宅ワークをしているケース
普段は会社員として働いており、副業として在宅ワークをしている場合は、副業としての所得が20万円以上ならば確定申告を行う必要があります。
副業として行う内職や在宅ワークなど、業務請負として行っている多くの仕事は「雑所得」というカテゴリーに分類されます。
雑所得の内容は利用目的によって違いがあります。例えばフリマやオークションなどで不用品を買い取ってもらい収入を得た場合は非営利目的に分類されるため、基本的に所得とはなりませんが、自分で作ったハンドメイド作品を販売する場合には営利目的と判断されます。
雑所得は種類によって定義が変わるため、わからないことは管轄の税務署に確認するようにしましょう。
アルバイトやパートと在宅ワークを掛け持ちしているケース
主婦の方など、パートやアルバイトなどと在宅ワークを掛け持ちしているケースでは、パート先で年末調整を行っている場合も多くあります。
在宅ワークや内職を掛け持ちしているケースでも副業と同じ雑所得としての扱いとなるため、年間所得が20万円を超えている場合は確定申告が必要です。
ただし、副業による収入が20万円以上だったとしても、それにかかる経費が10万円だった場合は所得は10万円となり、確定申告が不要な場合があります。
また、2ヶ所以上でパートやアルバイトなどを行っている場合、年末調整をしていない方の職場の収入と在宅ワークの所得の合計金額が20万円を超える場合は確定申告が必要です。
確定申告が不要なケースもある
専業在宅ワーカーでも所得が48万円未満の方や、副業としての所得が20万円未満の場合には確定申告の対象とはなりません。
また、在宅ワークによっては作業量ではなく時給換算での業務形態としている勤務先もあり、給料としての扱いで年末調整を行っている場合もあります。
在宅ワークや内職を本業として年間48万円以上の所得がある場合でも、勤務先で年末調整を行う場合においては確定申告を行う必要はありません。
確定申告が必要な方についてや申告手続きの方法については、国税庁のHPから確認することができるので参考にしてみてください。
参考:国税庁ホームページ
確定申告を行わない場合はどうなる?
上述した条件に当てはまる、確定申告が必要な方が確定申告を行わなかった場合「無申告」という扱いとなり、ペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」の措置を取られてしまう可能性があります。
無申告加算税は、納めなければならない税金の他に無申告によって加算された税金を納めなければならないというもので、納付すべき税額が50万円以下は15%、50万円以上になると20%が合算されて請求されることになります。
さらに、期限までに税金を納めなかった場合の延滞税や、所得の隠ぺいや悪質な経費計上があった場合の重加算税といった措置を課されてしまう可能性もあります。
また、確定申告が必要な方が申告を行わない行為は「脱税」という犯罪と見なされます。「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金」という刑罰を課されてしまうため、納税者の義務として忘れずに確定申告を行いましょう。
参考:所得税法 | e-Gov法令検索
第六編 罰則 第二百三十八条
まとめ
今回は在宅ワーカーが自宅で仕事をする際に経費にできるものとできないものの種類についてや、確定申告が必要な必要になるケースについて解説しました。
- 在宅ワークをする場合、経費として申告できるものとできないものとがある
- 在宅ワークや内職など自宅で仕事を行う場合は家賃や光熱費・通信費なども仕事でかかる一部を経費として申告できる
- 在宅ワークや内職を行うために購入した備品や消耗品は全額を経費として申告できる
- クライアントとの打ち合わせや事業のための出張などにかかる交通費や出張費なども経費として申告できる
- 仕事場にあるものでもプライベートで使用するものについては経費にできない
- 税金や保険料なども経費にはできないが、所得税における社会保険料控除や生命保険料控除を受けることはできる
- 本業で在宅ワークや内職をしている場合、年間の所得が48万円を超えると確定申告を行う必要がある
- 副業として在宅ワークをしている場合は、副業としての年間所得が20万円以上の場合は確定申告を行う必要がある
- 複数のパートやアルバイトと掛け持ちしている場合、年末調整を行っていない職場と在宅ワークの合計が20万円以上ならば確定申告を行う必要がある
- 確定申告を行わず税金を納めない行為は「脱税」という犯罪行為にあたり、状況に応じて追徴課税される可能性や、最悪の場合は刑事罰を受ける可能性もある
在宅ワーカーが自宅で仕事をするうえで必要となるものについては、購入代金や費用を経費として申請することが可能です。ただし、家賃や光熱費・通信費などの私生活でも使用しているものについては、仕事で使っている一部の割合のみを申請できるということを覚えておきましょう。
また、基本的に在宅ワークや内職などをしている場合は確定申告が必要ですが、年間所得が48万円以下の場合は所得税がかからないため、確定申告しなくても大丈夫です。
副業として年間20万円以上の所得がある場合は、勤務先で年末調整を行っていたとしても確定申告を行う必要が出てきます。
金額に応じて申告が必要な場合と必要ない場合があることを理解しておき、節税対策に努めましょう。